映画感想『LOGAN/ローガン』:超ハードボイルドで最高!(ネタバレあり)

映画『LOGAN/ローガン』観てきました!

いやあ、面白かった!

予告編や海外の評判から察したとおり、マーベルのアメコミ映画なのに全然アメコミ映画ぽくない感じでした。15歳未満鑑賞不可で繰り広げられる強烈なバイオレンス描写。素晴らしい!こういうの、私は大好きです。日本の予告編はマイルドですが、かく言う私もYouTubeで偶然、海外向けの映像を見て衝撃を受けて、映画館に行くことを決めたクチです。そこでの映像は、ナイフで身体を切り刻むという、昔怖いもの見たさで見たどこかの国の虐殺動画のような生理的にクる、ちょっと度を超えてエゲつないものだったので多少心配していたのですが、本編では観客がついてこられるように巧妙にグロレベルを上げていく(笑)ので、そこまでキツいとは感じませんでした。

 

ちなみに私はX-MEN関連の過去作品は1本も観たことがありません。笑

 

世代的にはちょうど小学校の高学年か、中学生かくらいの時に、日本で最初にアニメが放送されていたはずです。友達が学校で話題にしていました。しかし私自身はそのアニメも全くの未鑑賞で(多分その時間を費やしてWOWOWバットマンのアニメを見ていました。笑)、当時のマンガ週刊誌の冒頭特集か何かで記事だけ読んで、あーサイクロプスっていう青いスーツに赤いゴーグルの人と、ウルヴァリンっていう黄色いスーツの狼男みたいな人がメインなのね。そしてウルヴァリンオリハルコン(みたいな)の爪があって、驚異の身体回復能力を持つ最強の戦士であると。ほほう。で、その後、何年にも渡って何回も映画化されているけど観る機会は無く(笑)、なんか予告編とかポスターとか見る限りウルヴァリンがいる時もいない時もあるから、あー結構人気があって長く続いてるシリーズものなのね。というざっくりした前提知識だけで観に行きました。

 

以下、ネタバレ全開で感想を書いていきます。

 

 

 

ありそうでなかった西部劇なアメコミ

これは公式の見解でも出ていますが、確かに西部劇ですね。ロードムービー。 渋いです。スーパーマンみたいな無敵反則キャラは出てきませんし、主人公は手から刃こそ生えてきますけど、超回復能力というチート機能はいい塩梅に弱体化しているので、あとは普通の人間とあまり変わりません。

展開とか全然違いますけど、全体的には超有名作でいうと『レオン』と雰囲気が似ているかも。最強だけど社会と関わろうとしないオジサンと、只者ではない可能性を感じさせる幼い少女の組み合わせっていう点で。最後に2人が追い込まれる状況も似てます。しかも「凶暴な純愛」とかでなくて、親子の関係だから、なんか安心して(?)見ていられるのも良いです。

私は正直マーベル作品はあまり観ていません。評判は良いですし、あのカメラがぐるぐる回りながら敵味方のキャラと無数の破片とかビームが入り乱れる絵は最高に格好良いと思います。多分映画全体での完成度も高いのでしょう。

しかし私は、適度に暗かったり癖があったりする映画が好きなので、それにはあのザ・王道的オールスター!みたいな感じからちょっと敬遠してしまうところがありました。「日本人よ、これが映画だ」とか言われてもねぇ(困)。私はザックスナイダーの作品が大好きです。曲者ですみません。その点、ローガンは暗いです。登場人物も少ないです。良いじゃん!笑

余談ですけど、アベンジャーズのあの長回しワンカットでカメラがぐるぐる回る絵は最高に格好良いと認めますが、新しさはそこまで無いと私には思えちゃうんですよね。私は映画には新しさを求めてしまう傾向がありまして。長回しはそれこそ映画に昔からあるド定番の手法です。カメラぐるぐるは98年の『マトリックス』が最初に発明したものだと思うし、無数の破片が飛び交うのは07年の『トランスフォーマー』だと思ってます。事実誤認はあるかもしれないですけど、世間に広く認知させたという意味で。で、それをいいとこ取りして、クオリティを上げてバリバリ格好良い絵を作ったってことね。と思ってしまうと、私の中では他にも観たい映画に優先順位で負けてしまうのです。

じゃあ今回の『ローガン』は何が新しかったと言うと、アメコミらしくないところ、具体的には、上述したロードムービー的要素と、アメコミらしからぬ超ハードボイルドなアクションであり殺陣でしょう。

 

アクション最高!

腕にナイフを巻きつけて出来そうなアクションは全部やったんじゃないかしら(笑)ってくらい次から次へ、あの手この手で、バッタバッタと斬り捨てていくのが最高に格好良かったです。R指定にしたおかげでかなり直接的で残忍な描写もできるので、まあキレが良くなる訳です。

特にローラが出てきたお陰でアクションの幅が広がっていました。子供が出てきて大男どもを皆殺しにするという、単体で暴れるだけでも十分トリッキーなのに、ローガンと一緒になって戦うと、もう訳がわからんことになってました。あのローガンの伸身で前に飛び込むのはオキマリのポーズか何かなんだろうか。どこからそんな推力が生まれるんだ。ちゃんと娘も同じポーズで飛んでいく殺陣があってクスリと笑ってしまいました。

銃を使わないキャラが、複数人を次々と倒すのは爽快ですね。どこかで見たと思ったら『バットマンVSスーパーマン』のバットマンだ。あとは『キル・ビル』もか。それでいて肝心なところではちゃっかり銃を使っちゃったりする所も、お茶目な部分でもあるし、より現実的に描かれた部分でもあるので、好奇心が刺激されて面白かったです。

あと、メキシコ国境を越えるあたりでのカーアクションも良かった。

 

ローラちゃんの可愛さ

顔は美人さんで、ちっちゃいのに手足がスラリと長くて、しかし喋ってみると意外にもメチャメチャ子供っぽい声(序盤はスペイン語しか話さないから余計に子供っぽく見える)。嫌が応にも、あーこれナタリーポートマンの再来だわって思うでしょ。

しかも、それでいてミュータントという役柄上、感情むき出しでキエエーー!って暴れまわって見事な殺陣を披露...ってなにそれ最強じゃん!さらに、物語後半では女性らしさというか母性愛を披露する展開もあり、本当に「お得」な役回りだったと思います。笑

手の爪が2本というのも、絶妙の可愛らしさ。

 

看護師さんはYouTuber

映画の演出上仕方ない部分はあると思うが、看護師さんが遺したメッセージ動画のクオリティが高すぎて笑ってしまいました。あんな都合の良いフッテージを、あんたこれまで何十年も撮りためてきたんかい!てゆうかいつ編集した?

音声だけ動画にして、普通に女の回想シーンでいいやんけ。そのあと別の動画を見つつ、ローガンとチャールズが「俺は信じない。この女の話には証拠がないからな」「いや、ローガン見るんだ。彼女は証拠動画を撮りためていたらしい。彼女の話は本当だ」とか台詞を入れるとか。

しかし、こんなに重要な情報の入ったスマホを現場にそのまま残すって殺し屋連中は杜撰すぎないか?笑

 

子供達の逃げる戦うのきっかけがわからん

物語の展開に合わせて、都合よく逃げると攻撃するを使い分けているように感じました。笑

というか特殊能力を与えて、それが成功する保証もないのだから、普通は手術して頸椎とかに爆弾仕込んでおくのが定石な気がします。そうすれば用済みになったらボタンひとつでお終い、あんなに面倒臭い展開にはならないのに。しかも、その起爆スイッチには射程距離という制約があれば、子供を走って追いかける必然性も、スイッチを奪い取ってからは子供達が大反撃するという展開も、無理のない脚本で持っていけるのに。

 

新旧ローガン対決!

日本版の予告編でもこの存在は徹底的に隠されていたので良かったと思います。ただし私は海外の誰かがYouTubeにアップしていた映像で、若いローガンが出てくるのは知ってしまっていましたが。涙

ターミネーターでもやってたので、目新しさはそこまでありませんが、実際に私も先の動画を見るだけで「ああクローンか」と察してしまいましたし。アクションは良かったです。同じキャラクターが戦うのは鉄板の面白さですね。あの爪で切り裂かれる感じは、敵がやられる分には平気ですが、主人公が斬られる立場になると感情移入しているので相当キツかったです。

しかしクローン君は、何故プロフェッサーXを殺してしまったのだろう?人類最強の脳みそなのに...ってコントロールできないんだから殺すのが当然か。脳と遺体は回収して、分析かけて次のクローンで作るつもりなのでしょう。

 

トムハーディがよくやるキャラ

敵のボス?の右手が義手の男。トムハーディに演じてもらいたかった。

 

アダマンチウム移植の功罪

最強の身体になるために移植した爪が、実は毒性があってジワジワ身体を蝕んでいた、というのは皮肉なものです。いかにも現代ぽい設定。ということはローラちゃんも将来同じ苦しみを味わうことになるのか...というところまでは敢えて劇中で触れないのも良いですね。

だけど、これって登場人物が勝手に予想して話してるだけで、実はローガンが弱体化した本当の理由であると証明はされてないですよね。ただの老化じゃねーの?笑

 

台詞で説明しすぎない演出

表情だけで伝えるローラもそうなんですが。

ローガンが退院する時、車の運転席から荷物をどける、その動作だけで、小さなローラがこの車を運転してきたことがわかります。このテンポ感が良いです。下手な脚本家なら「お前が運転してきたのか」とかローガンに野暮な台詞を言わせかねません。

何気に子供には「絶対に運転させない」というローガンの姿勢とか、ローガンが気を失ってからはローラはおそらく脚の上に座って運転していたのでしょうか、そういう細かい点も親子のやり取りとして本当にありそうで、上手い演出だなーと思いました。

 

ラストの潔さ

子供達はクスリをまだ持っていたと思われます。それを安直に出してきて、飲ませるんだ!とか言って生き返らせなかったのは、素晴らしい判断だったと思います。笑

  

シェーン!カムバック!

西部劇の超有名作『シェーン』を大胆に引用したのは良かったなー!!泣けました。

物語中盤で結構長めに尺を取って流していたから、これ絶対後半で伏線回収されるだろうな、と思っていましたが、キャラクターの行動指針だけでなく、ローガンへの弔いの言葉としてそのまま使うとは、一本取られました。

さらにダメ押しで、最後、ローラが十字架をおもむろに持って何するのかと思えば、傾けて「X」にするとか、何うまいことやってんだ。笑

看護師の動画もそうですが、演出のために、全体的に皆ちょっとキザな性格になっていて、個人的にはツボに入っていて、笑えます。

  

続編がいくらでも作れるシステムは健在

ヒュージャックマンは「この映画はウルヴァリンの最後なんだ」なんて、涼しい顔で堂々と言い放ってますけど、カナダへ逃亡する子供達の背中を見るに、続編もまだまだ作っていくつもりなのは明らかですね。今作品では登場人物のほとんどの特殊能力は明かされていませんし、おそらく既存のミュータントの特殊能力は一通り押さえているのでしょうけど、正直どうにでも自由に作れます。最強のアイコンであるウルヴァリンの能力もちゃんと娘に継承されましたし。準備は万全ですね。逞しいマーベルは永遠に不滅であります!笑

そういえばアイアンマンも世代交代して女の子になったな...

 

ということで1つの完結する作品として優秀でありながら、続編にも無理なく繋がる見事なエンディングでした。次回作がとても楽しみです。私は見るか分かりませんが。暴