『ジャスティス・リーグ』ネタバレ感想(※追記:現実を受け入れるための苦悶の足跡)

新宿の最速上映というやつで夜中に観てきた。

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私が観たのは2Dのドルビーアトモスだったが、厳密には最速ではない00時30分スタートだったのと、矢張りアトモスは割り増し感があるからか、前の方や両端は少し空いていた。私はアトモスの包まれるような音響が好きなのだが。00時00分ジャストスタートのIMAX3Dは満員御礼で終了後に場内拍手が起きていた模様。いやー映画は2Dだと思うんだけどねー。笑

目次 

  • まずは良かった!安心した!(...ということにしておこう。苦笑)
  • 2020年9月追記。訂正します。
  • しかし一抹の寂しさは残る
  • 画角がビスタだった件
  • ヘンリーカヴィルについて
  • 音楽について
  • エズラミラーについて
  • 回収できてない伏線について
  • 戦闘シーンについて
  • トウモロコシ畑について
  • ジェレミーアイアンズについて
  • エイミーアダムスについて
  • ガルガドットについて
  • まとめ
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映画感想『LOGAN/ローガン』:超ハードボイルドで最高!(ネタバレあり)

映画『LOGAN/ローガン』観てきました!

いやあ、面白かった!

予告編や海外の評判から察したとおり、マーベルのアメコミ映画なのに全然アメコミ映画ぽくない感じでした。15歳未満鑑賞不可で繰り広げられる強烈なバイオレンス描写。素晴らしい!こういうの、私は大好きです。日本の予告編はマイルドですが、かく言う私もYouTubeで偶然、海外向けの映像を見て衝撃を受けて、映画館に行くことを決めたクチです。そこでの映像は、ナイフで身体を切り刻むという、昔怖いもの見たさで見たどこかの国の虐殺動画のような生理的にクる、ちょっと度を超えてエゲつないものだったので多少心配していたのですが、本編では観客がついてこられるように巧妙にグロレベルを上げていく(笑)ので、そこまでキツいとは感じませんでした。

 

ちなみに私はX-MEN関連の過去作品は1本も観たことがありません。笑

 

世代的にはちょうど小学校の高学年か、中学生かくらいの時に、日本で最初にアニメが放送されていたはずです。友達が学校で話題にしていました。しかし私自身はそのアニメも全くの未鑑賞で(多分その時間を費やしてWOWOWバットマンのアニメを見ていました。笑)、当時のマンガ週刊誌の冒頭特集か何かで記事だけ読んで、あーサイクロプスっていう青いスーツに赤いゴーグルの人と、ウルヴァリンっていう黄色いスーツの狼男みたいな人がメインなのね。そしてウルヴァリンオリハルコン(みたいな)の爪があって、驚異の身体回復能力を持つ最強の戦士であると。ほほう。で、その後、何年にも渡って何回も映画化されているけど観る機会は無く(笑)、なんか予告編とかポスターとか見る限りウルヴァリンがいる時もいない時もあるから、あー結構人気があって長く続いてるシリーズものなのね。というざっくりした前提知識だけで観に行きました。

 

以下、ネタバレ全開で感想を書いていきます。

 

  • いやあ、面白かった!
  • ありそうでなかった西部劇なアメコミ
  • アクション最高!
  • ローラちゃんの可愛さ
  • 看護師さんはYouTuber
  • 子供達の逃げる戦うのきっかけがわからん
  • 新旧ローガン対決!
  • トムハーディがよくやるキャラ
  • アダマンチウム移植の功罪
  • 台詞で説明しすぎない演出
  • ラストの潔さ
  • シェーン!カムバック!
  • 続編がいくらでも作れるシステムは健在
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20年前にアメコミで『シン・ゴジラ』はすでに存在した?:書評『ザ・ビッグガイ&ラスティ・ザ・ボーイロボット』

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ネタバレ感想です。

  • キャッチコピーは妥当か?
  • これはアメリカ版の『シン・ゴジラ』だ
  • モンスターがめちゃめちゃ強い
  • 自己増殖機能でどんどん増える
  • 見た目が気持ち悪い(褒め言葉)
  • 言語:一見ちがうように見えるが実は?
  • 特撮を意識した構図
  • モンスター討伐の鍵を握るのは日本の●●!
  • でも最後の頼みの綱はもちろん●●!!
  • 総評

キャッチコピーは妥当か?

私は知らなかったのですが、その筋では結構有名なアメコミだそうです。ちょっとやりすぎでキモちわるくて子供が見たらトラウマになりそうな絵柄です。いわゆるカルトコミックってやつですね。今回、2017年5月25日、目出度く邦訳出版されたということをアマゾンのお勧めから知って、プレビューでの絵の精緻さと、原作がフランクミラーなら期待できる!ということで購入しました。

そのアマゾンの商品紹介なのですが、以下のように書いてあります。

シンの大怪獣&ロボットバトル、日本襲来!!!

アメリカ・コミック界を代表するアーティスト、
フランク・ミラーとジェフ・ダロウによる
シンの大怪獣&ロボットアクションコミック
『ザ・ビッグガイ&ラスティ・ザ・ボーイロボット』が遂に邦訳化!

え?『シン・ゴジラ』ですか?

まーた、話題の何かに乗っかろうとして。節操ないなー。というか流石に5月末になってシン・ゴジラを絡めてくるのは、遅くないか?ブルーレイ出たの2か月前やで。なんて思っていたのですが、商品が届いてみれば、なんとブックカバーにまで同じ宣伝文句がありました。おいおいマジかよ、帯じゃなくてカバー本体ってことは、一時的な流行でなくてずっとこれで行くってこと?と一瞬ひいてしまったのですが、読んでみれば、これが想像以上にシン・ゴジラしてました。

というかズバリ、これはアメリカ版の『シン・ゴジラ』です。かるく検索した限りでは、両者の類似性について言及している記事はまだ無いようでした。なので、今回はそこらへんに着目して記事を書いてみます。

 

ということで、ビッグガイ&ラスティについてネタバレで語りますが、必然的に『シン・ゴジラ』のネタバレにもなります。ご留意ください。この記事に興味があって、かつ『シン・ゴジラ』をまだ観てないという人も少数派な気もしますが、一応。

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『ローグ・ワン』感想(ネタバレあり)

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宇宙の映画を観たら私はブログを書くのかw

ネタバレ記事です。

 

とても良い映画だった。

今年一番衝撃を受けたのは『シン・ゴジラ』だが、

映画の品質ではこちらの方が上だった。

まあ予算が10倍以上違って、おそらく時間もかけているのだろうから

それは仕方が無い部分は大いにあるわけで、

私は映画とか芸術の意義は、衝撃こそ一番重要だと考えているので

そういう意味では今年の最重要作品は『シン・ゴジラ』になるけど、

良い映画だったのは間違いなく『ローグ・ワン』でした。

 

なんせ絵が格好良い。

構図にメリハリが効いていて迫力がある。

引きの絵になったときも、まあ自然が綺麗なこと。

序盤の冷たい大地も、中盤の砂漠も、終盤の南国も。

 

撮影の容易さが多分にあったとは思うのだけど

氷の世界か、岩肌しかなかった戦闘シーンで

あの南国の島国の感じはビジュアルが斬新で。

しかも戦闘シーンの激しさ、凄まじさたるや。

あー思い出した。これ『地獄の黙示録』で観た光景だわ。

 

というか前半の市街戦も中東ぽいし

クライマックスはベトナムだし

デススターの爆発は核爆発ぽさ全開だし

この英国人監督は本当攻めるのね。

2014年の『ゴジラ』でも水爆実験の映像表現とか

米国海軍のエライ人の台詞に「HIROSHIMA」とか攻めてた。

 

考えてみればあの『ゴジラ』があんなに脚本がクソでも

ゴジラが出てくる場面が不必要なまでに絞られていても

ゴジラが出てくる場面がいつも夜でそれも暗すぎて全く見えなくても

それでもあの『ゴジラ』を当時何回も観て

今でも時々観たくなってしまうのは

矢張り、この監督の絵作りの巧妙さであったり

1つ1つの場面の盛り上げ方や見せ方であったり

作品の主題に対する愛情や情熱なのだろう。

そういう映像のパワーを発揮出来る監督だよね。ギャレスエドワーズって。

 

JJエイブラムスは観たいヤツが来たぜヤッホーイ!って感じだけど

ギャレスエドワーズはもっとビジュアルが直接ガツン!と来る感じ。

ホノルル空港とチャイナタウンでのゴジラの咆哮はこの後何十年と生きて

私が死ぬときでも「今まで観た映画で印象的なシーンBEST10」とかに残ってると思う。

割と冗談抜きで。

 

なんか途中からゴジラの記事になっとるw

 

無数のオマージュ

閑話休題

スターウォーズ過去作品からの引用が多くて楽しかった。

モンスターチェスとか、デススターの操作盤とか、謎の日本兜風のヘルメットとか。

一番笑ったのは帝国軍施設によくある、あの4方向から閉まる扉。

あれ、どう考えても、明らかに無駄が多い構造でしょ。

でも第1作で出しちゃったから

当時としては異世界の感じを出すために

目新しい仕掛けの1つとして取り入れただけだと思うのだけど、

現在の作品で大真面目にやられても可笑しく見えちゃうよねー。

いや、褒めてますよ。

 

まさかの全員●●!

そして何より白眉だったのが、まさかの全員●●になるという展開!

(伏せ字にする意味あるのかw)

まあ、あらすじの時点で何となく「悲劇的」な結末は予想できたけど

「でも、とはいえ、1人か2人は●●から逃れて、とかなるんでしょw」

とかいう予想を完全に裏切って

物語の収束に徹する、その姿勢に男気を感じた。

御都合主義になりがちな所謂ハリウッド超大作には珍しい潔さ。

こういう「仕事に徹した」映画って好きだわー。

 

インターステラーと2001年宇宙の旅の相似点

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【ネタバレ】記事です。

 

土星の近くにワームホールが発見された。我々はそこに行く」

 

この台詞の時点で私の脳裏には『2001年宇宙の旅』の木星モノリスがよぎりました。

 

公開初日に『インターステラー』を観てきました。事前知識はほぼゼロでした。なにせ公開初日って知らなかったくらいです(笑)。帰りの電車の中で検索してるときに知りました。数週間前に一度だけYouTubeか何かで予告編を見かけて、牧場の一軒家と宇宙服のマシューマコノヒーが交互に映るから「なんだこれは?Interstellarってなんだ?」くらいの感想だったのですが、なんか荘厳な空気だけは心に引っ掛かってたんでしょうね。で、公開前日に誰かのブログで「クリストファーノーラン監督の最新作は壮大なSF超大作インターステラーだ」みたいな触れ込みを見かけて、上映スケジュールを調べるとTOHOシネマズ日本橋のTCXスクリーンだったので、これは観ておくか、と。これが大正解でした。

 

なんでこんな話をつらつらと書くのか。この映画を観ると、偶然の出来事のように見えても、実は意味や因果があって全てはつながってるのかも。なんて空想がしたくなるのです。偶然に触れた予告編やブログの記事や、一瞬しか見てない予告編の映像のパワーに惹かれ、そしてなんと公開初日に映画館まで私は足を運びました。これは運命だったのではいなか、みたいな。完全にノーランの術中に嵌まってますね。

 

宇宙やSFに関する事前知識はあったほうが確実に面白い

初見のオドロキや感動は何にも優るので、あまり予備知識は入れないほうが良いと思います。ただし、映画の内容ではなくて、一般論としての宇宙科学や、過去のSF映画に関する知識は、あったほうが絶対に楽しめます。たしかに「親子の愛」が重要なファクターであり物語の主題にはなっていますが、言うても映画をエンターテインメントとして成立させるための要素であり、これはこれで非常に重要なことであり成功していますが、この映画の核心というか、芸術作品としての作者の創作動機はやはり「宇宙へのロマンと畏怖」だと思います。

 

ブラックホールワームホールウラシマ効果。重力を作るために回転する宇宙ステーション。運動量保存の法則。モールス信号。はい、これはもう理系男子のための映画ですね。私も特別詳しいわけではないので、自分でイチから説明することは難しいのですが、映画の中で登場人物の台詞はチョロっと触れるだけなので、それを聞いただけで「ああ、あれのことね」とすぐに思い出せるくらいでないと、テンポ感についていけません。偏見かもしれませんが、女性の方は頭上に「?」がついてる人が多かったと予測してます。そんな細かいこと気にさせないくらいドラマもアクションもよくできてるので、そこまで問題にはなりませんが、3時間の超大作でそれに見合った感動ができるか、といえば問題です。アメリカにくらべて日本ではSFコンテンツがあまり普及してないし、作り手もそこまでお金をかけてないので、作り手が前提としてる予備知識には大きく差があると思います。

 

そして過去の映画の知識。日本は映画を軽視してると思います。否、軽視は言い過ぎでした。でも、テレビドラマのスピンオフ物と、アニメに比重を掛けすぎてると思います。それが日本市場の求める物であり、マーケティングから導かれた結論なので、どうすることもできないですが、いちおう総合芸術と呼ばれる映画について、絵画や音楽や文学や演劇といった他の芸術と同様に、過去の名作は抑えておきたいところです。観客の知識レベル(知能ではなくあくまで知識)が低いために、作り手が忍ばせた仕掛けやギミックがほとんど機能しなくなって、いわゆるオマージュという表現が、一部のコアな映画ファンにしか伝わらない。寂しい話だと思います。なお元ネタが鉄板で面白いので、オマージュも単体で十分鑑賞に堪え得るものにできます。そこから深読みしたい場合のみ問題になります。

 

このエントリーでは私が一番感動したポイントを書きます。それは、この映画がキューブリックの『2001年宇宙の旅』に真っ向勝負していることでした。以下は本格的にネタバレになります。

 

 

インターステラー2001年宇宙の旅の相似点

このブログエントリーの序盤にも書きましたが、「土星ワームホール」というシチュエーションがすでに「木星モノリス」のオマージュです。ていうか私はちょっと吹き出しそうになった。木星にしたらそのまますぎるから土星にした、くらいではないでしょうか。

 

で、映画のクライマックス。マン博士が母艦へ向かうあたりから2001年ムードが濃厚になります。というかアクションシーンの違いこそあれ、ほとんど同じ筋書きで物語が進行します。これこそがオマージュだよ!リメイクであり再解釈だよ!私は感動と興奮で涙がちょちょぎれでした。

 

母艦に入れてもらえないマン博士

クーパー「自動ドッキングを無効にしろ」

TARS「もうやってる」

クーパー「…(声にならない唸り)…ナイス!」

痺れました。2001年でのボーマン博士とHALの遣り取りがこんな形で昇華されるとは。これ、コンピュータが自分の意思でハッチを閉じてますからね。それが暴走でなくて、人間とのポジティブな共同作業として行われていることに感銘を受けました。

 

ハッチ爆破で吹き飛ぶマン博士

2001年のときは上手く行ったのにね。。。現実はこんなものでしょう。ただあそこまで派手に吹き飛ばす威力があったのかは疑問ですが。もっと地味に飛ばされるんじゃないかしら。この直後に控える回転ドッキングのための、映画としての見せ場のための爆発ですね。あんまり地味に飛ばされたら、あの二人だと助けにいくか議論になりそうだし、それくらいなら完膚なきまでに吹き飛んだ方が好都合です。誤解のなきよう書いておきますが、エンターテイメントのためならこの程度の脚色は良いと私は思っています。

開けてもせいぜい台風程度の風がくるくらいだと思います。というか空気が全部抜けちゃえば余裕で入れます。マン博士がもうちょっと冷静だったなら、ハッチを開ける前にロープとかで身体を結びつけて、最初の突風さえしのげば母艦に入れたでしょう。マン博士はボーマン博士と違って宇宙服(ヘルメット)を着てるのだから時間には余裕があります。私は宇宙科学にそこまで詳しくないので、このそんなに風は強くないという想定は間違ってるかもしれませんが。

 

常規を逸した回転ドッキング

2001年で使ったハッチの強制オープンはマン博士によって見事に玉砕したので、物語の演出上、今回は別の方法を採ります。映像は格好良いです。ここでも人間とコンピュータが共同作業してて良いです。映像は全然ちがうけど、有り得ないレベルの困難な状況で母艦に入る、というプロットはそっくり踏襲しました。

さらにもっと言えば、そもそも「回転する母船に宇宙船が回転を合わせてドッキングする」というシチュエンーションそのものが、そのまま2001年の序盤で回転する宇宙ステーションにスペーシャトルが到着するシーンへのオマージュですよね。あちらでは優雅なクラシック音楽に合わせて和やかに展開していきますが、今作ではぐっと回転スピードが上がって、それがまるで2001年の公開から50年近く経ち世界のスピードと複雑度が目まぐるしいほどに上がった現在を示しているようで私の胸は躍っていました。

 

 ブラックホールに落ちていくクーパー

これは、言わずもがなでしょう。2001年を観たことがある、それに思い入れがある人だったら、興奮せずにはいられません。1968年に当時としては画期的だった特殊効果を用いたサイケデリックでショッキングな映像。ガツンとくる音楽。私も数年前に幸運にも銀座にある松竹の大きな劇場でリバイバル公開を観る機会がありましたが、そのときでも巨大スクリーンいっぱいの映像に大興奮しました。それが2014年ではどう解釈されて描かれるのか。どんどん高まります。クーパーの乗る子機が分離して境界線へ落ちていく段階でSFファンは心の中で「キター!」って叫んでいたはずです。

船に乗ってる時点で、クーパーの顔を何度も正面からアップにするのは明らかに2001年を意識していました。構図がそっくりです。ちなみに私が一度だけ見かけた予告編で、特に印象に残っていたのがこの場面でした。なんとなく感じ取った荘厳な空気が、実は2001年のオマージュ部分だったという、それは印象に残って当然だし、ストーリーを知らなくても心に引っ掛かってたのだから、純粋に映像そのものが持つ力の証明でもあります。ノーランの見せ方や腕前は本当に力がありますね。

そして問題の光がブワーと流れてくる映像も出てきます。まあそれは程よく2014年的なセンスにコンバートされてましたが、このまま続けてもあまり新しさはありません。どうするのかと思ったら、ここでまさかのコクピット射出。映画冒頭の悪夢から数えれば実に3回目の同じシチュエーション。この映画は本当に伏線とか回想の使い方が上手いです。

この後でてくる5次元を3次元モデルに置き換えた映像も素晴らしいですが、ここについては2001年のトレースを意識してるとは考えにくいので、いったん飛ばします。

 

 白い部屋で年老いたマーフに再開するクーパー

個人的にはここも2001年のリメイクだと思います。まさか白い部屋で若き主人公が命の最期を見つめる場面まで再現されるとは思いませんでしたから、とても感銘を受けました。劇場の他のお客さんは父と娘の再会に感動していたかもしれませんが、私は2001年のあんなに無機質で不気味なシーンが、こんなにも有機的で心穏やかなシーンに昇華されたことに驚き、感動の涙を流しました。

見つめる対象は年老いた自分から年老いた娘に変わりました。でも娘なんて自分みたいなものです。DNA的には半分自分ですし。2001年ではまったく理解できない状況下で、ただ孤独に死を待つだけの年老いた自分の姿を見ていましたが、今作ではきちんと理解できる状況下で、幸せに囲まれながら死にゆく年老いた自分の娘を見る。2001年ではまったくの孤独でしたが、今作では沢山の大切な人たちに看取られる。 

 

リメイクと深読み

以上、私が感じた、『インターステラー』と『2001年宇宙の旅』の相似点でした。いかがでしょうか。過去の名作をきちんと辿りながら、つまり構造としてはまったくの相似形でありながら、現代の解釈を加えて再構成することでまったく異なる結末や感想を得られるという、とても良いリメイクになっていると思います。

そして、同時にこれが意味するのは、映画鑑賞には過去の映画を知っているほうが有利な場合があるという事実です。当たり前ですが『2001年宇宙の旅』を事前に観ておかなければ、この深読みはできません。深読みだけが唯一の正解とは言いませんが、作り手の意図を受け取る手段として、深読みできるに超したことはないですよね。