『ジャスティス・リーグ』ネタバレ感想(※追記:現実を受け入れるための苦悶の足跡)

新宿の最速上映というやつで夜中に観てきた。

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私が観たのは2Dのドルビーアトモスだったが、厳密には最速ではない00時30分スタートだったのと、矢張りアトモスは割り増し感があるからか、前の方や両端は少し空いていた。私はアトモスの包まれるような音響が好きなのだが。00時00分ジャストスタートのIMAX3Dは満員御礼で終了後に場内拍手が起きていた模様。いやー映画は2Dだと思うんだけどねー。笑

目次 

 

まずは良かった!安心した!(...ということにしておこう。苦笑)

不安だったのは私だけではないはずだ。前作、そして前々作で、DCは酷評されている。『ワンダー・ウーマン』は快作だったが、あれはパティ・ジェンキンス女史によって起こされた突然変異の亜種であり外伝みたいなものだから、やはりこちら、すなわちザック・スナイダーによる『マン・オブ・スチール』からの連作こそが本流であり、正統なDCエクステンデッドユニバースだと思うので、そうなると嫌が応にも不安が先行する。

一つ断っておくと、私はザックスナイダーの映画が大好きだ。確かに「長すぎる」とか「暗すぎる」とか批判があるのは分かる。一部のコアなファンからは「原作を尊重してない」と文句が出るのも分かる。しかし、それらを吹き飛ばすくらい滅茶苦茶クールで刺激的な映像がグワンと広がるときがあるじゃん!『バットマンVSスーパーマン』の冒頭のシークエンス(飛び散る真珠、走る少年、落ちる洞窟、浮かび上がる少年)とか!雨と廃墟の中で戦う一連の流れとか!それが味わいたくて彼の映画を観るんじゃん!ビジョンを見せるのが映画じゃん!ザックスナイダーの目を借りるのが楽しいんじゃん!*1

逆に言えば、それだけ多くの不満が出るのは、真摯に作ってるのが映画全体から伝わってくるからだろう。圧倒的なコミックオタクだからこそ為し得る超絶に尖ったビジュアル。それがあるからこそ彼の過去の作品は、一部のファン(私のような)にとって圧倒的に支持される映画に成り得たのだと私は理解している。つまり「こっちではこんなによくできてるのに、なんでこっちではあのポイントを取りこぼしているんだ!」という、期待値が高いからこそ出てくる要望なのだと思う。

しかしそれは「大作」レベルくらいまでならニッチなファンを掴むだけで十分にペイするから良かったかもしれないが、ジャスティスリーグのように「超大作」として大衆から愛されることを求められる場合にはマーケット的にちょっと許容できないのもまた事実。風当たりが悪いことにライバルであるMARVELが「うぇーい楽しいカンジ」で興行的にバズってしまっている(た)以上、どうしたって「そういう成功事例があるんだから倣えよ」という流れになってしまう。極論すれば「芸術作品」を目指すのか、「商業的プロダクト」を目指すのか、くらいベクトルが違うのだ。

時として芸術作品はスマッシュヒットを起こす場合がある。日本の例になってしまうが、2016年の『シン・ゴジラ』はまさにそういう類だ。あれは庵野秀明が極限までオタク精神を投入して作り上げた一種の箱庭のような作品。それを覗き込んだ観客は特撮ファンじゃなくても「おお、これはすごい」と納得させるだけの力があり、社会的にもバズったおかげで想定以上のヒットになった。ただしそれでも同年公開の『君の名は。』に数字では遠く及ばなかった。シンゴジラは同年の日本アカデミー賞では俳優賞以外のほぼ全ての部門でグランプリを獲るという偉業を成し遂げたのだが(君の名はが脚本賞の一冠に留まった一方で)、芸術作品が叩き出せる興行成績には限界があるということが見て取れる。そしてジャスティスリーグは最早『300』レベルの「スマッシュヒット」では許容されないくらい大きな数字を期待されているコンテンツなのだ。

とにかく。

ワーナーは「楽しいカンジ」に大きく舵を切った。それで今回ザックスナイダーは十分に「みんなが楽しめる感じ」をキープしつつ面白い作品を今回出してきた。まずはそれに安心した。ユニバーサルは『マミー』が興行的に振るわずにダークユニバースの撤退を示唆しているらしいが、ワーナーはこの明るくて楽しいヒーロー映画でまずは首の皮をつないだかなーと。そこに安堵を覚えた。『スーサイド・スクワッド』でコアな映画ファンが感じたであろう面白そうな予告編とのギャップも基本的にはなかったし。及第点。なんて偉そうな感想文だろう。笑

 

2020年9月追記。訂正します。

この章だけ後から追記したものです。

今思えばこのブログ記事は最大の後悔だ。私は間違っていた。公開されてしまった映画がこうだった、しかしそれでもまだDCEUは続くという状況に、なんとかこのクソみたいな駄作を受け入れなければならないのだ、という考えから、自分の気持ちに嘘をついていた。ただでさえ世間の事前の盛り上がりが微妙だったこの映画に、私の記事を見て映画館に行くのを止めるファンが少数でも出ることが怖かった。だから無理やり自分を納得させて批判的な文章は控えた。でもそれは間違いだった。本当にごめんなさい。

でも私はこの時まだ知らなかったのだ。つい一週間前に先行して公開された世界各国では『Release The Snyder Cut』という運動が起き始めていたことを。当時の私はTwitterもやっていなかったし。そして何より、この時点ではまだ、この作品が本当にザックスナイダーが監督したものだと誤解していた。だからある程度の路線変更は受け入れようと自分に言い聞かせていたのだ。

だが現実は、違った!

路線変更なんてもんじゃない。スタジオはザックの意向を踏みにじっていたのだ!!

私のザックへの愛を疑う人は、どうか、私が三日後に書いた記事を読んでほしい。私がネットで検索して海外の記事を見つけ、それを読み、自分の疑念は正しかったと知り、その熱量を「抗議文の邦訳」という形で表現している。そこから先は主にTwitter上でずっと『Release The Snyder Cut』を言い続けてきた。この初鑑賞当日に勢いで書いて公開した文章は最大の汚点であり失敗だった。なぜ自分の気持ちに正直になれなかったのか。悔やまれる。削除したい気持ちも大変にあるが、自分への戒めとして、また人への反面教師として、残しておこうと思う。

この追記を書いている2020年9月の時点で、すでにスナイダーカットの公開は決まっている。実に3年近く戦い続け、ようやく手にした勝利だ。現在はエズラフラッシュにベンアフが帰ってくるというグッドニュースと、ジョスによる再撮影時で不当な扱いを受けたレイフィッシャーがスタジオを告発しているという、なんとも複雑な状況に陥ってしまっている。是非とも芸術家が尊厳を持って作品を発表できて、人種によって判断をしない真に人間を愛する者が気持ち良く仕事できる環境を作って欲しい。

追記はここまで。以下は当時に作成した文章に戻ります。

 

 

しかし一抹の寂しさは残る

しかし私の心には一抹の寂しさが残った。それは他ならぬ、上でさんざん述べてきた「芸術性」が弱まったことだ。

今回、大衆ウケを意識して、かなり編集や台詞がマイルドになったと思われる。それによってザックスナイダーのビンビンに尖ったビジュアルやハードボイルド感は薄まってしまった。説明はしないけど絵の凄みだけで強引に持っていく、みたいな「謎の説得力」が私は好きだったので、正直ちょっと寂しい。

さらに、影響が大きいと思うのは、編集の端折り具合だ。この映画は明らかに端折りすぎだ。おそらく配給元の意向だと思われるが、意地でも120分に収めた感じがハンパない。ワンダーウーマンは良かったけどスーサイドスクワッドは破綻していたよね。やはり複数の登場人物のドラマを120分というのは無理があるのではないか。確かに130分を超えてくるとトイレの心配が生じるので、私も短くまとめるのには賛成なのだが、しかし物語を破綻させてはいけない。というのも回収できてない伏線がいくつかあった気がする。(いろいろショックだったので正直あまり厳密には思い出せない)

また、観客に理解させるためには、いま劇中で何が起こっているのか、またはその出来事が劇中の人物にとってどれだけ重みがあるかを、「間」を使って伝える必要があるのだが、今回は展開を急ぎすぎて、それを逸している気がする。テンポが早ければ良いってもんではない。緩急をつけるのが大事なのだ。しかも台詞でしか説明してない。特に中盤でヒーロー達が自身の暗い部分について少し話す場面があるが、そこはもう少し時間を取って欲しかった。観客がついていけないよ。なんかBGMを忘れてしまったことでアゲ要素がなくなった『ワイルド・スピード』のような感じ。笑

しつこいけどザックスナイダーの過去作品はそこらへんがちゃんとしていた。だから3時間超えたりしてしまうのだが。

編集を端折った件に関しては、是非ともブルーレイ発売時にはエクステンデドカットの収録を期待したい。それも哀しいが。でもトイレを気にしなくて済むので。笑*2

 

画角がビスタだった件

今回は2DのTCXシアターで観たのにビスタサイズだった。がーん。シネスコで観たかったのに。これはIMAXシアターの方が映えるわな。ソフト化した時に画面いっぱいに広がるからビスタ規格なのは、それはそれで嬉しいけど、映画館ならシネスコで観たかったなー。

 

以下では、内容に触れますので、大小のネタバレを含みます。ご注意ください。

 

ヘンリーカヴィルについて

やっぱスプスはかっこいいね!ポスターにいないのが勿体無い!笑

前作で地面の土が舞い上がったから自力で復活したのかと思ってたけど、そうじゃなくてリーグのメンバーに普通に蘇生されててちょっと笑った。逆に言えば、前作のドゥームズデイも確実に死んだことが証明されてて、物語の筋は通っているが。前作ラストで棺から舞い上がった土は、洞窟に落ちたブルース少年が浮かびながら見たコウモリと同じで、心象表現だったのですね。つくづく完成度が高い映画だなバッツVスプスは!

であれば、生き返るまでもう少し重たい演出をしてあげても良かったのに。編集を端折ったので一番割を食ったのはこの人かも。だってあっさり復活しすぎでしょ。死体の顔を接写しなかったのは良かったと思うが。それでもアクアマンが抱きかかえて羊水につける場面では、構図を有名なキリスト復活の絵と同じにするとか、もう少しヨリで撮りつつも顔は見せないようにするとか、箔をつけるための工夫はもう少しできたのではないかと。つうか、キリストのメタファーが、あんな近代的な手法で復活して良かったのか?ダメだろう!笑

復活したスプスがリーグを襲うのは、YouTubeに海外の誰かがリークした映像のタイトルで、私はアクシデンタルに事前に知ってしまったのだけど、まあ普通に楽しめた。圧倒的に強いのが気持ち良かった。これぞスプスって感じで。フラッシュが高速で近づいている時に、普通のスピードで襲ってくるスプスは最高に怖くてカッコ良かったなー。

復活してスーツの色が明るくなってた。前作までのダークな色合いでも十分カッコ良かったのに勿体無い。つうかあれは惑星クリプトンの服なんだから、明るくなった説明はできなくないか?ワーナーも苦労してるなー。笑

ビルをまるごと運ぶシーンは今までになく楽しいシーンではあった。いわゆる皆が知ってるクリストファーリーヴのスプスですね。

 

音楽について

ザックスナイダーが家庭の事情でポストプロダクション段階で途中退場せざるをえなくなって、そのどさくさで交代させられた感があるジャンキーXL氏。代わりに入ったのはダニー・エルフマン。もう序盤から雰囲気がザ・アメリカ映画って感じで、ひょっとしたら前作までと雰囲気が変わった一番の要因はこの人かもしれない。

よく言えば普遍的。悪く言えば、まあ可もなく不可もなく無難、って感じではあったが、ここぞという場面でティムバートンの『バットマン』やリチャードドナーの『スーパーマン』から旋律を引用してるのは楽しい気分にはなった。と思って調べたらまさに89年のティムバートン版の音楽担当だった。なるほど。

 

エズラミラーについて

物語をライトにする役割として、ガルガドットとエズラミラーが立ち回っているのはグッドだったと思う。ガルガドットの笑顔は単純に可愛い。そしてマイノリティとしてオタク要素を持ってくるザックスナイダーとエズラミラーに、その視点があったかと目から鱗。確かに、そもそも動きが速い人は、しゃべるのも早そう。そして早口といえば、オタク。笑

ただし、戦闘シーンではきっちり決めるガルに対して、エズラミラーが戦闘中まで茶化すのはちょっとやりすぎだった気がする。最初の戦闘で「オレ超ビビってるんすけど!うけるー」ってやつは良かった。実施怖いもんだとは思うから。でも普通に最後の戦闘ではもうちょいシリアス路線でもいいじゃん。なんか後半ずっと無意味に寝てなかったか?彼も戦士として成長したってことで。トラックの女の子に話しかける場面は全然グッド。ほんのちょっとのサジ加減の問題。あれであの街の人達は全員救えたのかと考えると疑問は残るけどね。

 

回収できてない伏線について

冒頭の子供がスプスをスマホで撮影している場面!あれ何だったの?笑

「スーパーマン、この地球で一番好きなところは何?」「うーんとね...あ」言おうとしたところで映像が途切れる。お、これは物語の終盤で同じ場面が出てきて、今のは子供がiPhoneで撮ってるテイだったけど、たぶんそれを俯瞰的に普通に物語として展開して見せる場面が来て、きっとみんなの心をホロっとさせるようなことを言うぞ。と期待していたら、結局出てこなかった!笑

せっかくエンドロールの途中や終わりにおまけエピソード含めているんだから、これも入れればよかったのに。というか入れろよ!こっちはあそこで何を言ったのか2時間も待ってたんだぞ!笑

これは本当に上手くない。純粋に映画の手法としての失策。原作ファンがあーでもないこーでもない言うのとは別次元の話。なぜあれでOKにしたのか。脚本ならびに編集を担当した方々を全員集めて説教したい。笑

 

戦闘シーンについて

MARVELと差別化するためだと思うが、DCでは基本1対1のデュエルスタイル。それは良いと思うが、あんなに強いと分かっているステッペンウルフなんだから、2人で同時に攻撃することだって全然ありうるでしょ。なぜそれをしないか。実際にスプスには全員で飛びかかってたのに。笑

つまり同意に攻撃できない、しにくい理由となるカットを挿したり、「せーの!」でやってみたけど失敗したり、というシーンがもうちょっとあってもいいかも。とは少し思った。ちょっと展開が怒涛すぎて追えてなかった可能性もあるので、ここはもう一度観てから判断したい。

でも映画なんて1回で伝わらないとダメだよねー本当は。

追加撮影も編集もザック主導でできたら!戦闘シーンだけでいいから!と嘆いても仕方ないことを嘆いてみる。ブルーレイの特典映像に...なるわけないよなー。笑

 

トウモロコシ畑について

予告編にあったあの素晴らしいシーンは何処に行ったの?

絵も綺麗で良い場面だったのになぜ使わなかったんだろう。

 

ジェレミーアイアンズについて

ああいう皮肉っぽいジョーク言わせると巧いね。

 

エイミーアダムスについて

正直ちょっと老けて見えた、というかコンディションがあまり良くなかった。

MoSから5年くらい?

帰り道で調べたら43歳だった。追加撮影が急に決まったのかな。人間は動物である以上老いていくものだが、トップクラスの俳優さんはよくよく管理して撮影までにカラダを作ってくるものだと思っている。でも急に決まったらそれも難しいよね。

 

ガルガドットについて

最後に爆発の閃光を受けたとき、それまでなかった感じでアップで脇が強調されるショットがあった。ビーム撃つときだって1回もクローズアップされてなかったのに、ここに来て急にどうした?あれはたぶんジョスだと思う。定石をちゃんと踏む演出なのね。ただのサービスショットで、構図も意味も平々凡々なカット。いわゆるグラビアポーズね。

 

最後に書いた感想の、なんという下劣さ。笑

なお初回鑑賞時には例の最低なジョーク(hungry or thirsty)は理解できていませんでした。 日本語字幕担当者が気を遣ったのかそこまで下劣ではないダジャレ(hungry or angry)に変更されていたので。ただよく考えるとあの場面は(he or she)とか(放送禁止用語)とか酷い台詞のオンパレードなのよね。

 

まとめ

全体としては佳作だったと思う。暴(発言撤回する。下手にマイナスプロモーションになるかと思ってこう書いたが、今になって思うと完全な駄作でしたね。あの時ウソを書いた自分を思い切り殴って止めさせたい。)

見やすいサイズだし。映画にライトな友達にも薦められる作品にはなった。笑(こちらも発言撤回する。結局、低品質なモノを見せても好きにはなってくれないので、この判断も間違いだった)

ただし私の個人の欲求でいえば、ザック成分100%だったと思われる最初のトレーラーは超えられなかったかもしれない!というのが正直な感想。万人ウケするとは決して言わないが、今回のはさすがに大衆に迎合しすぎたのではないかと。早くザックが心の傷を乗り越えて、またもう少しダークな感じで作ってくれることを期待する。

正統な続編は『Justice League Dark』になるのかな。ウィキペディア英語版によると。期待。

 

しかし次回作が観られるのは相当先になりそうだ。。。

 

追記:あの頃の自分へ。3年半後にスナイダーカットを観れるよ!笑

 

投了。

*1:あんなのフランクミラーのトレースじゃん、という方がいるかもしれないのでついでに書くが、私は『エンジェル・ウォーズ』の戦闘シーンのビジュアルとか構図とか流れとかは、BGMも含めて最高にクールだと思っている。主人公の名前が「ベイビードール」で女子高生コスプレでツインテールという所謂ロリ路線なルックスでといったあたりを理由に拒否反応を起こしている人がいそうで大層残念だが、あれは異質なものが同居している面白さだと理解すれば最高なのに。

*2:少しネットを漁ったところ、実際には180分編集版が先にあって、それを120分に削ったのこと。この判断は正解だと思う。ちょっと削りすぎだとは思うけど。これはもうエクステンデド収録は決定的ですな。笑